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ペルソナシリーズをはじめとするメガテン関連?

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Trick taking game 1

同人サンプル

********************

切り札は最初から君の中にあった


The Fool , The Magician


知恵の実を食べた人間は、その瞬間より旅人となった…

カードが示す旅路を辿り、未来に淡い期待を託して。

そう…、とあるアルカナがこう示した…

強い意志と努力こそが、唯一夢を掴む可能性であると…

 暗く深い海へ、一人で放り出された。

 それが僕の一番古い記憶だ。
 記憶は混濁している。覚えていることは多くはない。
 気がつけば僕は漆黒の闇の中にぽつんと座り込んでいた。
 幼かった自分はただ呆然と無の空間を見上げているしかなかった。
 月明かり一つない。完全な闇から産声をあげたような。そのまま溶けてしまっていたかもしれない。
 そうならなかったのは、僕の元へ何かが落ちてきたからだ。
 
 闇色の赤子。

 意識さえ混濁していきそうな中で、現れたそれを僕は夢中で抱きしめた。
 それが光を宿していなくとも、救いの形をしていなくとも、ただ一人ではなくなったことが嬉しかった。
 無垢な悲しみに満ちていた赤子を、僕は奥底へと受け入れた。

 そして僕等は、闇から二人生まれ出でる。

 僕は幼い頃、事故にあった。
 両親の乗っていた車で、不思議と僕だけが無傷で助かった。
 僕を引き取ってくれた叔母と叔父にこの話をすると、事故で記憶障害が起きてしまったのだろうと哀れみに満ちた顔をされたので、それ以来二度と口にしていない。
 目覚めた時には病院のベッドの上だった。事故の瞬間や前後の事、それ以前の生活や両親の事を覚えていない所を見ると、叔母の言う通りなのかもしれない。
 けれど、特別困っていることもないので僕は大して気にしていない。
 いつもそうだ。
 気付いた時には、こんな性格だった。
 基本的にほとんどの事柄は僕から遠い。ガラス一枚隔てた向こう側の出来事のように、感触は遠く感情は鈍い。
 感情がないわけではない、人並みにはあるつもりだ。
 だが、決して起伏は激しくはないのだろう。激昂したり、涙を流すこともない。
 人生を投げやりに過ごしているわけでもない。それなりに日々を生きている。

 僕はどこかが眠っている。

 どうでもいい、が口癖になりつつある現状を自省しなくもないが、やっぱりそれさえ僕にはどうでもよく思えてしまうのだ。


 この春、僕は月光館学園へ転校する。
 義父が転勤になって引っ越すことになったのだが、僕だけは月光館学園へ転入して寮暮らしとなる。
 当然家族で引っ越すつもりだった両親は僕の提案に最初いい顔をしなかった。
 月光館学園がある港区は、子供の頃僕が住んでいた場所だ。そして、区内にあるムーンライトブリッチは事故が起きた場所でもある。
 そんな場所へ戻りたがる僕の気が知れなかったのだろう。
 義父母に心配をかけていることはわかっていたが、何故だか僕は戻らなければならないと感じていた。
 僕を呼ぶ声がするなどと言うと、頭がどうかしたのかと思われるかもしれない。
 ただ、必然の。理屈ではなく引き寄せられる力を、純粋に感じるのだ。
 両親は決断にはかなり渋ったが、普段主張の少ない僕の珍しくも譲らない様子に最後には折れた。一人で寮暮らしをする事についてはさほど心配されなかったあたり、なんだかんだ言いつつも僕に甘いのだろう。
 本当の両親の思い出を何一つ持たない僕にとっては、実父母となんらかわらりない愛すべき家族だ。
 その人たちを置いても、僕はあの場所へ還らなければならない。

 僕らが生まれた場所へ。

The High Priestess


そのアルカナは示した…

 心の奥から響く声なき声…それに耳を傾ける意義を…

 電車がホームに吸い込まれていく。
 ヘッドフォンの音楽の向こう側から、車体がブレーキに軋む音が雑音交じりに響いてくる。
 港区、巌戸台駅に滑り込んだ車体のドアが開いた。
 懐かしい、ふとそう思った。
 もう12時近いというに人が多い。今まで住んでいた場所とは違って、港区は若者の多いニュータウンだ。
 僕が住んでいた子供の頃はこれほど発展しておらず、風景は様変わりしているはずなのに空気に懐かしさを覚える。
 見知らぬ街へ一人降り立った感覚はなかった。
 不思議と、故郷へ帰ってきたような。
 僕は足を踏み出し、外へ出るべく改札へと向かった。

 階段を上り、改札を抜ける。
 地上が近づくにつれて、微かに海の香りが鼻先をくすぐる。
 ああ、僕は還って来た。
 以前より発展して、以前より雑多になったこの街が、僕の生まれた場所だと知っている。
 事故の事は覚えていないから悲しくも怖くもない。それらは現実感を伴わない記憶だ。
 僕の記憶は、暗闇のゆりかごにある。
 だから、闇は怖くない。

 カチリ、カチリ、秒針を鳴らす頭上の時計を見上げた。
 吸い寄せられた視線の先で、針はもうすぐ頂上へと辿り着く。

 10、9、8、……

 頭の奥で、カウントが聞こえる。

 6、5……

 もうすぐ。

 3、2、1、…ゼロ。


  『おかえり――』


 全ての明かりは消え去り、暗く青く光る闇の世界が、訪れた。
 停電だろうかと辺りを見回すが、人という雑音にまみれていたはずの駅はまるで異世界のように様相を変えている。
 誰一人として、いない。
 静かだ。
 その中で、黒く聳え立つ棺の様な箱だけがいくつも並んでいる。
 僕はその中を歩いていく。

 月明かりだけ、優しい。
 一人ぼっちの影の世界で浮遊散歩。

 何かおかしいと気付いてはいた。だが、怖さは感じない。
 これは、僕に近いもの、近い時間、これを僕は知っている。
 いつのまにか曲の止まってしまったヘッドフォンをつけたまま、少し湿った冷たい空気の街を進んでいく。
 様相がおかしい事と人がいなくなっているだけで、町自体は何も変わっていないようで、地図の通りに僕は進んだ。
 やがて、趣のある洋風の建物が見えてくる。
 やけに洒落ているが、あれが今日から僕が暮らす学生寮だ。
 事前に貰っている書類によると、この寮は特別寮で本来は別に男子寮と女子寮があるらしい。配属が間に合わなかったという事で、ひとまず僕はこの寮に入る事になった。
 ペンションの様な扉を押し開く。重い、扉だ。
 一歩足を踏み入れると、横にあるホテルのフロントのようなカウンターから声が掛かった。
 振り向くと、そこには囚人のようなボーダーの服を着た子供が一人がいて驚く。
 青い、蒼い、空と海を写した色の瞳。
 見ていると吸い込まれそうな、やっぱりどこか懐かしいような。
 僕を見つめるブルーアイズが柔らかく微笑みを浮かべた。胸の奥の深い部分が小さく音を立てる。
 
「遅かったね、長い間君を待っていたよ」

 寮生とはとても思えない。年齢的にもだが、彼の雰囲気は普通のそれではない。
 少年が赤いノートを開く。
 開かれたページを示し契約のサインを、と少年は続けて告げる。
 入寮のサインだろうか?よくは分からなかったが、僕は言われるがまま契約書にサインを書いた。
 氷守泉。それが、僕の名前だ。
 サインを受け取った少年は、蒼い瞳を瞬かせて夢のように消えていった。

「さぁ、始まるよ」

 シャッフルタイムは終了し
 カードは各自に配られた

 スタートの鐘は
 もうすぐ盛大に鳴り響く

070817OUT「Trick taking game」オフ本より冒頭抜粋

作品名
Trick taking game 1
登録日時
2008/08/24(日) 19:46
分類
ペルソナ3::SS(千里)
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